「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」(ASBJ/リース会計)
企業会計基準委員会 (ASBJ) は2023年3月9日、「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」の改訂を公表しました。主な内容は以下のとおりです。(リリース抜粋)
Read More1.開発中の会計基準
(1) リースに関する会計基準
(2) 金融商品に関する会計基準
(予想信用損失モデル に基づく金融資産の減損)
2.開発中の指針 (実務上の取扱いを含む。)
(1) 金融商品取引法上の「電子記録移転権利」又は資金決済法上の「暗号資産」に
該当す る ICO トークンの発行・保有等に係る会計上の取扱い
(2) 資金決済法上の「電子決済手段」の発行・保有等に係る会計上の取扱い
(3) グローバル・ミニマム課税に関する改正法人税法への対応
(4) 子会社株式及び関連会社株式の減損とのれんの減損の関係
3.その他の日本基準の開発に関する事項 (適用後レビュー)
開示に関する適用後レビューの実施
詳細については、ASBJウェブサイトをご覧ください。
「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」の改訂
リースに関する会計基準
1.-(1) リースに関する会計基準について、在外子会社のIFRS16・Topic842の対応で、何かしらのご経験をされている方も多いのではないかと思いますが、日本基準でも同等の改正リース会計基準の公開草案公表に向けて、いよいよ大詰めを迎えている状況と認識しています。
改正基準 (借手) では、ファイナンス・リース (FL) とオペレーティング・リース (OL) の区分を設けず、全てのリース契約 (名目不問、短期・少額除く) について、継続が合理的に確実と見込まれる期間 (≠解約不能期間) にわたって、支払いが必要となるリース料の将来キャッシュ・フロー (CF) を現在価値に割り引き、リース負債と (基本的に) 同額の使用権資産をBSに当初認識することが求められます。
適用時期については、改正基準公表から強制適用まで2年を基本に検討されており、2023年度中に改正基準を公表、強制適用は2026年4月 (早期適用可) からとの見方が多く、経過措置として、累積的影響額を適用年度の期首利益剰余金の修正として認識する、所謂「累積キャッチアップ・アプローチ」が選択可能となる見込みです。なお、現行基準 (所有権移転外FLのオンバランス処理) の導入時のような「新規契約から」といった救済措置は考えづらく、検討された様子もないように拝見しております。
実務に与える影響
財務諸表への影響としては、特に大規模な施設、航空機・船舶等の高額資産をOLにより賃借している会社では、資産・負債が大幅に膨らみ、自己資本比率・ROAが低下することが予想されます。損益面では、費用が賃借料から減価償却費+利息費用にシフトし (営業利益増) 、契約毎にみた場合、リース期間の当初に利息費用が多く発生し、その後逓減することから (毎期平均的に契約している場合は平準化) 、経常利益以下の損益に影響を与えるケースもあり得ると思います (少額の簡便処理除く) 。また、キャッシュ・フロー計算書では、OL支払フローが営業CFから財務CFにシフトすると解されます。
業務プロセスや情報システムに与える影響としては、多数の資産をOLにより賃借している会社では、負担増は避けられないと考えております。適用開始日現在の全てのリース・レンタル・賃貸借等の契約について、短期・少額の条件を満たす契約を除外、契約内容等から「継続が合理的に確実と見込まれる期間」を見積もり、オンバランス処理に含まれないサービス費用等を除いたリース料を特定、将来CFを現在価値に割り引くといった手続きを想定しております。
適用を開始した後も、新規契約時に同様の手続きが必要となる他、契約の変更・解約が生じた場合も、使用権資産・リース債務の金額に反映させる必要があり、減価償却・利息費用の処理も含め、現行のOLに係る業務と比較して、相当な業務負担増が見込まれ、情報システムを含めた運用体制の整備が求められると考えられます。
最後に
改正基準適用に伴い経営指標が大きく変動するケースでは、管理上も改正前後の情報が継続的・遡及的に求められる可能性がある点、また、FRS16を前提に注記情報の大幅拡充が予定されている点にも留意して、前広に準備を進める必要があると考えております。(貸手リース・サブリース等の論点は、今回は割愛させていただきました。)